ペット
主人の転勤で神戸を離れて8年。
それまでは運動不足解消のつもりで、楽しむ程度に、ペットの愛犬と六甲山を歩いていました。
ほどよい運動が身体に良かったのか、体調はますます良くなっていたのを覚えています。
神戸から離れてみて、六甲の山を懐かしく恋しく思う気持になりました。
50歳を境に体力の衰えを感じ始め、知らない土地で友達がなく不安な気持ちで元気をなくしかけていた頃、ふと思い出したのが、神戸市六甲全山縦走市民の会主催で毎年11月に行われている六甲山全山縦走大会56kmです。
朝5時に須磨浦公園をスタートし、高取山・菊水山・摩耶山・六甲山を経て宝塚がゴールです。
登る山々の高さだけでも3000mにも及びます。
一緒に歩いていた愛犬とともに、かなりの時間を体力の増進に費やしたと思っています。
もちろん愛犬は、今まで以上に外出時間が長くなりましたから、ふっくら気味だった体型も締まってきて、動きもシャープになったのではないでしょうか。
飼い主の生活リズムが愛犬にダイレクトに響くという事を身を以て知ったものです。
ウォーキングでは飽き足らず、今では軽いランニングまでメニューに追加しました。
走ると歩くを繰り返すことで、予想以上に持久力が付いた自信があります。
ただ、何度か張り切り過ぎて、ヒザや足首といった、元来は鍛えにくい箇所を傷めたこともあり、これも良い勉強になったものです。
我が家の愛犬のこと
我が家の愛犬は、非常に臆病者である。
家族の中で、最も自分と性格が似ているのがこの愛犬なので、私としても悪く言いたくはないのが本当のところだが、それにしたって天性の臆病かつ気が小さすぎる。
うちにやってきた時はまだまだ手まりのように小さい、乳離れしたかしないかくらいのきわどいところだったので、早くから母親と話された心理的な不安が彼をそう臆病に仕向けたのかはしれないが、とにかくやってきたときから際立って臆病だった。
当初から、彼の家として小さなスペースをサークルでしきり、寝床及び用足し場をそこにして、後は自由に家の中を歩けるようにしたのだが、あまりにそのサークルが怖いらしく、一歩も外に出ない。
外に出ようとして、脚をちょっと持ち上げてみるのだけれども、あっと言う間に恐ろしくなるらしく、とうとう一週間外に出なかった。
それから、なんとかサークルの外に出たら、今度は部屋の仕切りやドアが怖くって、サークルのある一間から出られずまた一週間過ごし、こんどはその次の間を出るのにまた一週間かかり、とひとつひとつの動作全てに一週間かかるという念の入れようだった。
なんとか数年我が家で過ごした愛犬は、ようやくこの環境に慣れて落ち着いてきたけれども、いまだに散歩に出ると、びっくりすることが余りに多すぎてこちらが困ってしまう。
小用を足そうと思って場所定めをしているさなか、その辺の草が風で揺れ、足を掠めて飛び上がる。
彼の場合、表現としての「飛び上がる」ではなく、文字通り「飛び上がる」のだ。
50cmくらい。
足元から急にバッタが飛び跳ねて、びっくりして飛び上がる。
何にもないのに、何だか気にして飛び上がる。
そうすると、小用を足そうとしていたのに引っ込んでしまって、そうなるともうどんなになだめてもすかしても、もう用を足せない。
そんな繊細な臆病犬なのである。
どうやったらそんなに気が小さくなるのか分からないし、さぞかし生きにくいに違いない。
けれども、それ程に手のかかる彼が、こちらとしては目に入れても痛くない程大変可愛らしいのである。